2008年08月22日

西濃運輸健保組合解散…高齢者医療で負担金増加、政管健保への移行


 今年の春、後期高齢者医療制度でいろいろと不評だった医療制度改革ですが、健保組合解散という新たな問題が生じてきました。財政再建に向けた公費負担の軽減のための負担を、安易に健保組合に押し付けたことからこうした矛盾が出てきています。

 西濃運輸健保組合が、8月1日付で解散していたことがわかりました。4月の高齢者医療制度改革に伴い、負担金が大幅に増えたことで事業継続が困難になったとしています。倒産以外で解散するのは、極めて異例のことであり、衝撃的でもあります。

 厚生労働省は、こういう展開になることは予測できなかったのでしょうか。高齢社会の日本が、年金も医療も不安、景気も後退では、将来が不安になってきます。無駄をなくすだけでは抜本的な解決はできないのかもしれませんが、無駄をなくそうという意識が行政には欠けているように思いますし、結局は、国民にツケが跳ね返ってくる結果になっています。

 今春の医療制度改正で、前期高齢者(65−74歳)の医療費について、健保組合は自営業者ら国民健康保険の加入者らの分も支える必要に迫られ、負担金が増加しました。

 西濃運輸健保組合によると、2007年度の高齢者医療関連の負担金は約35億8000万円。これに対し2008年度は約58億円と、前年度比で6割以上も増加する見通しで、約23億円の赤字が見込まれたといいます。

 健保組合は、政管健保よりも保険料率が低い組合が多いのですが、保険料の引き上げてまかなうのは困難であり、西濃運輸健保組合も、10%以上の保険料率に引き上げないと組合の維持ができないとのこと。政府管掌健康保険の保険料率(8.2%)を上回ることから事業の継続が困難として解散を決定したといいます。

 全国の健保組合が加入する健康保険組合連合会によると、2007年度は約7割の1056組合が赤字でしたが、今年度は約9割の1334組合が赤字になる見通しだそうです。

 他の健保組合にも健保組合解散→政管健保移行という流れが広がれば、国庫負担増に拍車がかかり、財政再建に向けた公費負担の軽減が目的だった医療制度改正が、逆に公費負担が増えることになり、高齢者医療制度改革の意義そのものが問われることになります。

【記事】

 <西濃運輸健保>組合解散…高齢者医療で負担金増加

 物流大手のセイノーホールディングス(岐阜県大垣市)のグループ企業31社が加入する西濃運輸健康保険組合が、4月の高齢者医療制度改革で負担金が増えたため組合を解散し、国が運営する政府管掌健康保険(政管健保)に移っていたことが21日、分かった。

 西濃運輸健康保険組合には従業員と扶養家族約5万7000人が加入しており、倒産を除いて大規模な健保組合が解散するのは異例。医療制度改正は財政再建に向けた公費負担の軽減が目的だが、西濃運輸のようなケースが増えれば逆に公費負担が増えることになり、高齢者医療制度の抜本的な見直しを迫られる可能性もありそうだ。

 西濃運輸によると、政管健保に移ったのは今月1日から。4月からの高齢者医療制度の導入で、負担金が昨年と比べて年間で約22億円(前年度比62%増)増える計算になるという。健保を維持した場合、組合が赤字に転落するため、将来的に保険料率を現状の月収の8.1%から同10%に引き上げる必要があるが、政管健保に移った場合にはほぼ現状の負担で済むという。西濃運輸の担当者は「前期高齢者(65〜74歳)納付金の負担が大きく、政管健保と比較した場合、独自の健保を維持するメリットがないと判断した」と話した。

 健康保険組合連合会によると、約1500の健保組合の保険料率は平均7.39%と政管保険の同8.2%を下回る。だが、制度改正で前期高齢者の医療費負担が新たに導入されるなどで、健保組合が拠出する負担金が約5000億円増えた。このため、赤字の健保組合は昨年度の7割から今年度は9割近くになる見通しという。

 【ことば】公的医療保険

 公的医療保険は、大企業の従業員が中心の健康保険組合(3000万人)や中小企業の従業員が入る政管健保(3500万人)、市町村が運営し自営業者らが加入する国民健康保険(国保、3800万人)、公務員らの共済組合(900万人)などがある。比較的財政が豊かな健保組合や共済は一部の例外を除き原則国庫負担はないが、政管健保は給付費の13%、国保は34%(定率分)が国費で賄われている。

 健保組合は75歳以上には拠出金だけを支出し、07年度までは会社員OB分を賄えば済んだが、後期高齢者医療制度(対象者1300万人)の発足に伴い、国保加入の65〜74歳の医療費も支援することになり、負担が膨らんだ。

   (8月21日 毎日新聞)

【記事】

 高齢者医療の拠出重荷、健保を解散 西濃運輸、政管へ

 トラック陸運業界大手セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市)のグループ企業の健康保険組合が今月解散したことがわかった。4月の高齢者医療制度の改革で負担金が大幅に増えて事業継続が困難になった。加入者は5万人を超え、倒産以外で大規模な健保組合の解散は極めて異例だ。

 加入者は、国が運営し、医療給付費の13%を補助している政府管掌健康保険(政管健保)に移った。高齢者医療の負担金が増え、今年度は約1500ある健保組合の9割が赤字になる見通し。今回の医療制度改革は、国の負担軽減が狙いの一つだが、政管健保への移行が広がれば国庫負担増につながる。

 解散したのは西濃運輸健保組合で、グループ31社の従業員と扶養家族計約5万7千人が加入していた。グループ中核の西濃運輸によると、西濃健保が07年度、75歳以上が対象の老人保健制度と、サラリーマンOBのための退職者医療制度に支出したのは計35億8700万円。

 08年度は、経過的に残った両制度への負担金(計11億6200万円)に、65〜74歳の前期高齢者納付金(25億2500万円)、75歳以上の後期高齢者支援金(21億1千万円)が加わった。高齢者関連は総額58億円と前年度比で62%増え、加入者から集める保険料の6割に相当する。

 この負担増を賄うには、保険料率を月収の8.1%から10%以上に引き上げることが必要だ。財政的に立ちゆかなくなり、今年3月に解散を決めて厚労相に解散認可を求めた。担当者は「65〜74歳の前期高齢者納付金の負担が重すぎた。積立金を取り崩しても赤字。健保組合継続の意義も薄らいだ」としている。

 赤字組合数の割合は02年度に8割に達した後、負担金を抑制する制度改正で3〜4割台に減少。しかし、昨年度は7割近くに上昇し、今年度は9割近くになる見通し。解散組合数はすでに、昨年度の12に並んだ。

 国が進める医療制度改革は、大企業の従業員が入る健保組合の負担で、国が多額の負担金を投入する市町村国保と、中小企業の従業員が入る政管健保の財政負担を抑えるのが狙いだ。今後、負担に耐えかねた健保組合の解散が続けば、国の狙い通りに進まない可能性がある。

  (2008年8月21日 asahi.com)



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