会社によっては、取締役営業部長、取締役経理部長などといった肩書きの方がいらっしゃると思います。
法人の役員等は、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。
しかし、同時に部長・支店長・工場長等会社の従業員としての身分も有している(=兼務役員)場合であって、就労実態や給与支払いなどの面からみて労働者的性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合に限り、雇用保険の被保険者となることができます。
「労働者的性格が強い」かどうかを判断するためには、ハローワークに様々な書類を提出したうえで総合的に判断されますので、会社や役員が安易に判断できるわけではありません。
届け出については、ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出し、労働者性が強いことを確認してもらわなければなりませんが、確認書類として、登記簿謄本、定款、就業規則、給与規定、役員報酬規定、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、人事組織図、取締役会議事録といった書類が必要です。
確認書類が多いような印象もありますが、兼務役員の雇用保険加入については、一般の労働者の雇用保険資格取得に比べると厳格であり、手続きの日数もかかります。会社の規模や設立時期により、就業規則、給与規定、役員報酬規定、人事組織図がないという会社もあるので、これらはハローワークの職員に理由を申し出て省略できることもありますが、それ以外の書類はほぼ必要となります。(管轄のハローワークによって違う場合もありますので、詳細は事前にお問い合わせしていただくのがよいでしょう)
●兼務役員雇用実態証明書(東京労働局)
http://tokyo-hellowork.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0012/0330/koyo022.pdf
総合的に判断されるということですが、次の2つの要素が大きな判断材料となります。
@役員報酬と賃金とを比べて賃金のほうが多く支払われている場合、役員よりも労働者としての役割、業務負担が大きいと判断される
A他の労働者と同じ取り扱いをされている場合、労働者性が強いと認められる
具体的には、勤怠管理が他の労働者と同様に管理され、出勤簿、賃金台帳等で勤怠管理をされ、他の労働者と同じように就業規則の適用範囲に含まれている
雇用保険料の徴収については、対象となる給与は、役員報酬を除いた賃金部分です。
また、退職時に離職票に記載する賃金や労働保険の年度更新の際に集計する雇用保険料の対象賃金も、役員報酬を除いた賃金部分となります。
なお、使用人兼務役員の労災保険の扱いについても基本的には雇用保険と同じ考え方です。代表権や業務執行権を持たない使用人兼務役員が役員報酬以外に賃金を受ける場合は、原則として役員報酬を除いた賃金部分について労働者として扱われます。
業務災害や通勤災害による傷病で休業し、休業(補償)給付を受ける場合、給付額の基礎となるのは役員報酬を除いた賃金部分となります。平均賃金を算出する場合は注意が必要です。労働保険年度更新の際に集計する労災保険料の対象賃金も、役員報酬を除いた賃金部分となります。
使用人兼務役員が健康保険・厚生年金保険に加入する場合、基本的な手続きは一般の労働者と同じですが、報酬月額は、役員報酬と賃金を区別せず合算した金額になりますので注意が必要です。